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2020/7/9 天上の葦 [読む]

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「犯罪者」「幻夏」に続く、太田愛の3作目。長かったです。
この3作品に共通しているテーマは、「国家権力による理不尽な人権侵害」でしょうか。
そして、この「天上の葦」では、戦争体験者たちの悲痛な叫びが伝わってきます。

太平洋戦争が終わって、75年。
幸い、日本は平和な国です。
戦争を体験した人の多くは、その生涯を終え、私のような「戦争を知らない子供たち」やそのまた子供たちの社会になりました。
私が若い頃、戦争経験者に戦争の話を聞くと、誰もが嫌な顔をして、「何一ついいことはない、絶対に戦争をしてはだめだ」と同じことを言いました。
戦争中は、戦争を否定するような発言をしただけで当局に拘束され、報道も政府に有利な内容に捏造されていました。当局側の人間も、心の中で思ったことを正直に表現することはできません。
戦争は、現代の日本人が満喫している自由を奪うだけでなく、生命や財産も脅かします。

以下、ネタバレを含みます。

正午、渋谷のスクランブル交差点。歩行者信号が赤に変わったあと、ひとりの老人が交差点の真ん中に立ち尽くし、右腕を上げて空を指さした。次の瞬間、老人はその場に倒れ、絶命した。

なにがなんだか、わからない出だしで始まります。

国家にとって好ましくない記事を書くジャーナリストを抹殺すべく、政治家の忖度をうけた警察が、事件をでっちあげ、無実のジャーナリストを犯罪者に仕立て上げようとする。

報道の自由を奪う行為はあってはならない。

そこから、太平洋戦争中に日本政府が行った、報道規制や嘘の報道に話が飛び、それによって日本国民がどんな悲惨な目にあったかが書かれている。

話は現代に戻り、3部作通して活躍する、相馬、鑓水、修司の3人が、事件を解決に導く。

もちろんフィクションですが、この話の中では、警察は人権も無視して、証拠も捏造、拷問も、、
とやりたい放題。上からの命令は絶対服従。良心は封印される。

中国政府が香港でしていることを連想させます。
日本の警察は、こんなことはしないと信じたいです。

原作者 太田愛は、テレビドラマ「相棒」の脚本を書いている人です。
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